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||| カイホウ ||| 階段からなんかが落っこってきたー! と思ったら、木根が落っこちてきた。 「よけんなよ」 メイクルームの1階上がスタジオ。 わざわざエレベーターに乗るのもめんどうだから、歩いて登ることにした。 木根は僕より2時間早くスタジオに入って撮影を開始。 僕は、木根がメイクを終わらせ撮影も終盤に差し掛かった頃を見計らってスタジオ入り。 別に遅刻したわけじゃないからね。 待ち時間をなくすためにスタッフがちゃんと考えてくれたスケジュールなんだから。 でも、僕がメイクを終わる前に木根は撮影を終わらせてたけど。 ちょっとだけ遅刻しちゃったかもしれない。 撮影が終わってもまだメイクが終わらない僕を待って、木根とカメラマンさんはスタジオで雑談していたらしい。 そして僕のメイクが終わりスタジオへと階段を登っていたら、木根が上から落っこちてきた。 「痛い?」 シップを貼ってる木根の足首をつっついてみる。 「痛いってば。触るなよ!」 木根は椅子に座り、もうひとつ椅子を側に寄せてその上に捻挫した右足を乗っけている。 「せっかちだよね。階段くらい普通に下りられないのかよ」 あのシーンを思い出しただけでまた笑いがこみ上げてきた。 落っこちてきた木根を僕は当たり前のようによけた。 僕のいるとこより3段下で止まった木根は起き上がるより前に文句を言った。 「よけんなよ」 でもやっぱり痛いみだいで、すぐに唸った。 焦ったスタッフが上から下から飛んできて木根を囲む。 そんな大騒ぎを、僕は3段上から見守っていた。 本当に痛そうな木根は、そのままメイクルームに担ぎこまれ、こうしてシップを貼ってもらった。 撮影は一時中断。 ヒマだから僕もみんなの後を追ってメイクルームに戻ってきた。 「なんで落ちるかなー」 もう一回木根の足首をつっつこうと思ったら、その手をがっちり木根に押さえられてしまった。 「頼むから、俺で遊ばないでくれる?」 「本当に痛いの?」 「痛いから言ってんだよ」 「ふーん」 タバコを1本取り出す。 「あ、俺も」 片足を椅子に乗せてる木根は思うように動けないらしく、僕に人差し指を突きたてた。 持っていたタバコを木根の口元に持って行く。 「いいって。手にくれよ」 木根は慌てて首を振った。 「いーじゃん。怪我人なんだから・・・はい、あーん」 「ウツ、マジで俺で遊んでるだろ」 「そんなことないよー」 しつこくタバコを口元に持って行く僕に、木根は観念したように口を空けた。 くわえたタバコに次はライターを持って行く。 木根はなにかモゴモゴ言っているけど、くわえたタバコが邪魔をして聞き取れない。 「早く、火付けるから」 しょうがなく、木根はタバコをちゃんとくわえ直した。 僕も一本タバコを取り出し、火を付ける。 大きく吸い込むと、木根がまたうなっている。 「なに?」 木根は顔を突き出してきた。 「・・・なに?」 木根は手でタバコを指している。 「・・・・・・なに?」 僕は木根の口からタバコを抜き取った。 「ほら、怪我人じゃん?タバコを灰皿に持ってけないわけよ」 「なんだよそれ」 「だからちゃんと灰を落として、そんでまたくわえさせてよ」 笑顔で言う木根の口に、そのままタバコを戻した。 「なんだよーもう遊び飽きたのかよ」 木根の側から離れ、ソファで雑誌を読んでる僕に木根がわめき散らす。 振り向くと木根は手をパタパタして僕を呼ぶ。 首を傾げてみると「喉が渇いた」と言う。 メイクルームの隅にあるケータリングの中からお茶のペットボトルを選んだ。 それを木根の所に持って行き、シップを貼っている足首の上に勢いよく置いた。 「いってー!!!!」 木根の雄たけびがメイクルーム中に響き渡る。 さっきまでそれぞれの仕事で忙しそうだったスタッフがわらわらと木根のまわりに集まってきた。 「どーしました?」 「やっぱり痛みます?」 「まさか、折れてるなんてことはないですよね」 スタッフに囲まれてる木根を遠くから眺めた。 木根は「違う違う」と一生懸命説明している。 その姿が本当に情けなくて、笑いがこみ上げてくる。 「笑うなよ。ウツのせいだろ?」 そう木根が叫ぶと、今度は僕にスタッフの目が集まる。 「え?なんで?」 笑いがおさまらないまま、キョトンとしてみせた。 「もういいんじゃない?」 またスタッフがそれぞれの仕事で忙しくなると、僕は木根の側に座った。 やっぱりシップを貼ってる木根の足首をつっついてみる。 「いや、ヤバイかもな。横浜、大丈夫かな」 「ウソでしょ?」 僕の目はきっとまん丸になってたかもしれない。 「そしたらみんなに言うから。『宇都宮くんにいじめられました』って」 木根は僕が持ってきたお茶を飲みながら笑った。 「こんな親身になって介抱してる僕をつかまえて?」 「宇都宮さーん。そろそろ撮影はじめまーす」 スタッフが僕を呼んだ。 「はい」 と軽く返事をしてから立ち上がる。 座ってる木根は僕を見上げた。 「待ってるから」 「え?」 「終わるの待ってるから」 「なんでだよ」 「親身になって介抱してくれるんでしょ?」 わけのわからないことを言っている木根は放っておいて、メイクルームを出た。 「あれ?木根さんもう歩いて大丈夫なんですか?」 メイクルームからスタッフの心配そうな声が聞こえた。 [20040311] |