不思議の国、群馬


群馬の電車

車社会の群馬ではあまり電車を使うことは多くない。

そのため乗客も多くないためか、本数も少ない。

朝夕のラッシュ時で一時間に三本、日中は一時間に一、二本程度。

終電が午後十一時で、何故かその前の電車が午後九時半頃。

午後十時台には電車がないのだ。

当然のように乗客は電車の発車時刻を調べてから家を出る。

平日の日中など二両編成の電車が走っている。

冬は全車両のドアが手動に変わる。

これらは全てJRの話だ。

もっと凄いのは私鉄。

上毛電鉄という電車は一キロ当たりの運賃が日本一高いらしい。

当然ほとんどの駅は無人駅だ。

つい何年か前まではクーラーがなく、扇風機で夏場をしのいでいた。

そして毎年のように廃線にするかどうかの話し合いがされている。

そりゃ車が無ければ生活していけないわけだ・・・。


群馬の山

群馬の人は何故か山が大好きだ。

赤城山、妙義山、榛名山、浅間山。

とにかくこの四つの山が大好きなのである。

いろいろなもののネーミングにこれらを使うのだ。

小学校の運動会の組み分けは赤組、白組ではなく赤城団、妙義団、榛名団、浅間団となる。

特に前橋市民は赤城山が大好きだ。

俺は小中高校全ての遠足で赤城山に登った。

そして小中高校全ての校歌の一番の歌詞が「赤城」で始まる。

特に教えてもらった記憶もないのに標高が1828メートルであることを覚えてしまっている。

そんな群馬では超メジャーな山、赤城山。

しかし全国的にテレビで放送されるのは、大沼のワカサギ釣りのときしかない。


群馬への偏見

東京に出てきて、よく言われることがある。

「群馬人は毎週のように温泉に行っているんでしょ??」

または

「群馬の家って風呂は温泉なの??」

群馬のどこでも温泉が湧くわけではありません。

他によく言われること。

「群馬の人ってみんなスキーが上手なんでしょ??」

とか

「群馬って冬になると雪が何メートルも積もるんでしょ。」

関東平野は群馬まで拡がっているのですよ。

総括的に考えると群馬は山しかないと思われているらしい。

確かに山地が多いのは事実だ。

でも前橋や高崎は平地なのです。

俺は今でも雪が降るとちょっとわくわくするし、前橋の小学校では雪が降ると次の日は授業を中止にして雪合戦をやる。

そのくらいまとまった雪が降ることは珍しいのです。

それなのに群馬が東京人にそのような偏見をもたれてしまう理由・・・、それは

東京人で温泉とスキー以外の理由で群馬に行く人などほとんどいないから。

確かにそれしかない県なのかも。


群馬の車

群馬は人口一人当たりの車の所有台数が全国一らしい。

18歳以上の県民は必ず自分専用の車を持っているといっていいほどだ。

農業をやっている友達の家には6台の車があった。

じいちゃん、ばあちゃん、両親、ねえちゃんが各一台ずつと、農業用の軽トラだ。

そんな家もそう珍しいことではない。

群馬人はみんな車が大好きだ。

何故そんなに車が好きなのだろう。

電車が発達していない。それも大きな要因だ。

もっと大きな理由があると思う。

群馬人はみな歩くのが嫌いだ。

徒歩5分のコンビニにも車を使う

東京の人は運動不足だとか言うが、群馬にいる方がよっぽど歩かずに生きていけるのだ。

だから群馬は駐車場がたくさんある。

コンビニ、パチンコ屋、デパート。

ありとあらゆる建物に満車になることなどほとんど無いような大きな駐車場が備え付けられている。

もちろん居酒屋にもある。

飲酒運転しろと言っている様な者だ

そんな群馬の居酒屋業界に最近変化が起こっているらしい。

そう、飲酒運転の刑罰が重くなり、取り締まりも強化されてしまったのだ。

市街地にある居酒屋はまだしも、郊外にある居酒屋など車を使わなければ行くことが出来ないのだ。

近い将来群馬から居酒屋がなくなる日が来る、かも知れない・・・。


群馬の高校生(1)

俺は高校時代も当然のように自転車通学だった。

しかも、同じ前橋市内なのに8キロも離れていて、所要時間は約40分ほどである。

中学校時代に鍛えたメッセンジャー級のスピードはもはやこの時代にはなくなってしまっている。

その一番の理由は

自転車がママチャリに変わってしまったから

何故か群馬の高校生の間では、ママチャリがかっこいいのである。

みんなカインズホーム(北関東限定のホームセンター)で一番安いママチャリに乗り出すのである。

そしてそのサドルを一番低くして、ちょっとアメリカンバイクのようにして乗るのが定番だった。

それじゃスピードが出るはずも無い・・・。

そんな圧倒的な不利な装備の時にもやつは襲ってくる。

そう、赤城おろしである。

俺は高校が家から見てほぼ真北にあったため、通学中ずっとその影響を受け続けなければならない。

ひどい日には行きは1時間以上かかり、帰りは20分弱ということもあった。

その強烈な北風から身を守るための必需品。

それは、軍手

群馬のチャリ通高校生の必須アイテムである。

真冬には2枚重ねてつける。

ブレーキも大して握れなくなるが、それも愛嬌ってやつだ。


*群馬の中学生(1)

中学校時代、俺はいわゆる〈チャリ通〉だった。

当然頭にはヘルメット、服装は学校指定のジャージの上下。

自転車は何故か24段階切り替えの可能な銀チャリというやつだった。

俺の中学校は田んぼのど真ん中に聳え立っていたので、夏などは軽く馬糞のにおいに包まれる。

冬は〈赤城おろし〉という尋常では無い北風に行く手を阻まれる。

そして雪が降ったりした次の日は路面が凍っているため、結構な割合の人間が横転する。

そんな中でも群馬の中学生のチャリは猛然と進んでいくのである。

めちゃくちゃ速い。東京で言うならメッセンジャー並みである。

それはみんな車道を走るせいかも知れない。なぜなら車があまり通行しないから。

毎週月曜日には朝礼というものがあった。

それには学生服の着用が義務づけられている。

みんな朝登校すると、ロッカーの中に詰め込まれていた学生服に着替えるのである。

ガクランを着る秋冬はそれでもいい。

しかし春とか夏とかは・・・

みんなYシャツがしわだらけなのである

そして夏場はみんな汗だくである。

何故ならメッセンジャー級のスピードでチャリをこぎ続けていたから

そんな月曜日のさわやかな朝から一週間が始まっていくのだった・・・。


群馬弁(1)

 群馬弁って言うと「〜だべ。」とか「〜だんべ。」とかを思い浮かべる人も多いと思う。この語尾の変化は

全国的に見ても有名で、俺自身も群馬にいるうちから知っていた。しかし群馬は一応関東圏なわけで、

テレビも東京と同じものが見れるから、方言なんてものはそのくらいしかないと思っていたのだ。それは

大きな過ちであることを知ったのは、進学のために上京した後のことだった・・・。

 「せわ」 

この言葉が通じないことに俺は愕然としてしまった。多分群馬の高校生の大半がこの言葉を一日に10回は

口にしているだろう。用例としては

「明日テストがあるからそろそろ家に帰って勉強しないと・・・。」
「そんなん
せわだんべ。まだ遊ぼうぜ。」   

とか

「遅刻が多くて職員室に呼び出されたんでしょ。」
せわ。すぐ戻ってくるよ。」

などである。

せわの通じない友達に俺は必死に意味を説明した。

「だから、世話ないってことだよ。」
「世話ないってどういう意味??」

えっ

世話ないって群馬弁??そういえばおばちゃんとかがよく使っていたけど、テレビでは見たこと無いかも・・・。

世話ないとは〈問題ない〉とか〈面倒ではない〉とかそういう意味である。

それを群馬の若者たちは略してせわと言っていたのだ。

ちなみにそれは一種の流行語なのかもしれないと思い、4コ上の先輩にも聞いてみた。

当然のようにせわを連発していたという。

東京の女子高生が〈きもい〉とかいうのと同じ要領だと思う。

でも、その省略の対象が方言なんだから、その言葉自体も当然のように全国共通ではないのです。

その事実に全く気づかずに上京してくる群馬の若人たち。

今年の春もそんな群馬人がたくさん誕生したでしょう。

彼らは言うだろう。

せわって共通語じゃないの???」